(お誘い☆サマルくん。うちじゃあ珍しいですよ〜)

たまにはこーゆーのもイイんでない?
ということで、ロレの願望から綴られたフィクションです。






「こいよ」

投げかけられた言葉の意味を解すまでに、
瞬き5回分程の時間を要した。

「んだよ。何か問題でもあんのか?」

問題?そんなものあるわけがない。
彼が座るソファへ歩み寄って、
試すように見上げるその目を見下ろす。

親指と人差し指で、彼の顎をくいと仰のければ、
煽るように目が細められた。
それに応えようと、瞼の上に唇を落とそうとしたら、
彼は、そっちじゃねぇよと嘯いて、唇を寄せてくる。

その態度に煽られないはずもなく、
悔し紛れに、覚悟しろよ、と言ってやれば、

「そっちこそ、覚悟しやがれ」

と返されたから堪ったもんじゃなかった。







「いいから」

そう言ってやれば、アイツは相当動揺したようだった。
そんな慌てふためく様なことを言ったつもりはなかったが、
そこまで驚かれると、
変なことを言ったのかもしれないという気がしてくる。

ああ、それともあれか。
俺の態度がまずかったのだろうか。
まあでも、ここまできて。という思いはある。
俺がここまで下手に出てるんだ、
これで文句言いやがったら承知しねぇ。
観念して食いやがれと、
こっちも自棄になってくるというものだ。

焦る相手にこっちが焦れる。
俺はとどめとばかりに言ってやった。

「お前が食わねぇなら、俺が食っちまうぞ」






「…んだよ。今更怖気づいたのかぁ?」

この期に及んで、この先を思い止まる相手をからかった。
まあ、コイツらしいと言えばコイツらしい。
何だかんだ言って、コイツは俺に優しいから。

コイツなりの葛藤があるんだろうし。
それが俺を思ってのものなんだと思うと、
くすぐったくもあるし、嬉しくもある。

だから。
実はほんの少し怖いと思ってしまっていることだとか、
俺にも葛藤があるのだと言うことは、
絶対コイツに悟らせる気はなかった。

それが。俺がコイツに返せる優しさだと思うから。

「ばぁか、なんつー顔してんだよ」







「俺じゃ、だめか…?」
「え…」

言っている意味が分からなかった。
何と答えて良いのか分からず、
無言で彼の出方を待っていると、
彼は居た堪れないように瞼を伏せて、もう一度呟いた。

「俺じゃあ、だめなのか?」

先の言葉と大した変化の無いものであったが、
彼のその思い詰めた表情と、震えの隠せない声音に、
その意図する所が伝わってきた。

どう応えるのが彼にとって最良なのか。
混乱をきたした頭で考えてみても、答えが出るはずも無く。
僕は、ただ呆然と彼の名を呟いた。

すれば。
彼は、今にも泣き出してしまいそうなその目をぎゅっと瞑り。
ゆっくりと、震え交じりの息をつくと、
意を決したように、僕の膝の上に乗り上げてきた。

(下に続く)




「俺じゃあ、お前の役に立たないか?」

俯く彼から漏れ聞こえたたその言葉には、
誤魔化せない確かな意味があって。
その問いが、冗談で流してしまえる類のものでないことを、
僕に教えた。

「なぁっ…」

切羽詰った声は痛々しく、
かたかたと震えるその手は可哀想な程だった。

ただ、俯いてるせいで垂れた髪に隠されたその顔は窺えず。
僕は衝動的にその髪に手を伸ばすと、
瞬間びくりと身体を震わせた彼を無視して、
顔を隠すその髪をかき上げた。

「………っ」

息を呑んだのはどちらだったのか。
既に泣き濡れていたその顔に、
僕は訳の分からない衝動を覚えた。

彼がどんな思いで、こんな行動に出たのか。
それは僕に分かることではなかったけれど。

彼のその泣き顔は、頭がおかしくなる程に愛しいと思った。




サマ「お前、俺にこーゆーことして欲しいわけ…?」
ロレ「いや、その、別にそういうわけじゃあ…ない、よう、な?そうでもない…よう、な?」

サマ「………どっちだよ」

ロレ「えーと。その、どっちと言われたら、やっぱり、その、たまには…とか?…ダメ?」
サマ「………………考えとく
ロレ「え……え!?何?今何て言ったの?聞こえなか――」
サマ「うるせぇっ!何も言ってねぇよ!!」









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