(ロレから見たクッキーちゃんの変遷?兄弟愛寄り)
14歳。 5年前の俺ってこんなんだったか? って、クッキーを見てると思う。 ころころと表情が変わるところとか。 迷惑をかけないように、 皆の役に立つように、って いつも兎に角一生懸命で。 俺に弟はいないけど、 出来の良い弟がいたらこんな感じかな、 って、誇らしく思ったりしている。 「ロレ?どうかした?」 「いや、何でもないよ」 黙り込んでいたらしい俺を不思議そうに覗き込んでくる彼の髪をくしゃと混ぜて、 俺は笑い返した。 |
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お、拗ねてる。 どうやらさっきの戦闘でムーンに後れをとったことを気にしているらしい。 クッキーはこう見えて、結構負けん気が強い。 人の何倍も努力して、剣も魔法も妥協しない。 剣しか能の無い俺なんかより遥かに凄いと思うんだが…。 下手に慰めると、「ロレには分かんないだ!」とか言って更に拗ねるから、 暫く様子を見ておくことにする。 と、見守る態度を崩さないでいたら、顔を引き締めた彼がつかつかと俺の前に姿を現した。 「ロレ、相手して!」 そう言って手渡されたのは一振りの剣。 俺は思わず可愛いな、と微笑ましく思ったのだが、そこはぐっと堪えて真面目な顔でそれを受け取った。 「いいよ。どこからでもかかってきな」 |
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本当に良く気の付く子だなぁと思う。 今も凄い不安そうな顔で俺に声を掛けてくる。 あれ?俺そんなキツそうに見えてるのか? いつも通りのつもりだったんだが…。 最近こんなことが多い。 自分で気づくより前に、クッキーに言い当てられることがよくあるのだ。 口に出さなくても、心配そうな表情とかで、無言の訴えを受けることもある。 痛い?辛い?苦しい? いつも通りを装っていても、クッキーには直ぐにバレる。 5歳も年下の相棒。 最近無意識に甘えてた節があったのかもしれない。 だめだなぁ、俺。 いい大人なんだから、しっかりしないと。 |
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ヤバい。泣かせるつもりじゃあ…。 15歳の誕生日から何日か経ったある日。 ふと気になって持ちかけた話題。 15歳といったら、色々アレだろ、という年長者としての意見というか助言というか。 …まあ、半ば興味半分で色々と聞き出していたら、まあ、その。 泣かれたわけだ。 なんか物凄く悪いことをした気分になった。 つくづく思う。 5年前の俺ってこんなんだったか?と。 得体の知れない罪悪感には気付かなかったことにして、俺はきまり悪い思いで謝った。 「えっと…、その、何か、ごめん」 「別に…」 どうせ子供だし。 別に、の後に続いたその言葉に俺は思わずふき出しそうになって、 寸でのところで咳で誤魔化すはめになった。 |
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それは会話の途中だったり、時には戦いの最中だったりした。 不意に困ったように視線を外されるようになったのは。 旅に出て二年が過ぎて、彼も大分成長した。 横はあまり増えなかったが、縦が伸びて、顔も大人びた。 国にいたら、盛大な成人の儀を執り行っている頃だろう。 16歳。 彼の成長を一番に嬉しく思っている自負がある俺は、 いち早く彼のその変化に気がついた。 ころころと元気に変わる表情が、いつの頃からか憂いを含むものになったのだ。 儚げとも言えるその表情にどきりとさせられたことも少なくない。 そして、その意味に気づいてはいけない、ということも感じ取っていた。 本当は。自惚れて良いというのなら。 その意味も、それへの俺の答えも、分かり切っていて。 でも。それでも、お互い気付かないままでいた方が良いこともあるのだと、俺は一人で決着をつけたのだ。 |
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