「愛してるよ」

その庭園で呟く。
自分しかいないその花咲き乱れる庭園で、一人、もう何度その言葉を紡いだだろう。
何度応えたところで、それはもう届くことはないというのに。
それでも、何度でも。何十回でも、何百回でも。届かなくても。
お前がくれた分の想いを返したい。

どうしてあの時、その想いに応えてやらなかったのだろう。
あれだけの想いに気付いていて、自分の想いも分かっていて。
どうしてあの時、その想いを伝えてやらなかったのだろう。

あの時のように、笑っていたかった。
あの時のように、一緒にいたかった。
あの時のように、心を交わしていたかった。

「愛してるよ」

ぽつりと響くその庭園は、昔と変わらず花が咲き誇っている。
その花園の中を手を引かれ駆け回ったお前との最初の記憶が、瞼の裏に焼き付いている。
そんな幼い記憶が、今でもこんな鮮やかに蘇るのに。
どうして、お前との最後の記憶はこんなにもぐちゃぐちゃなんだろう。

それでも、痛いほどに声だけは鮮明で―――



「泣きすぎだよ、サトリ」



喉の震えが止まらなかった。恐くて恐くて仕方なかった。
拭うのも忘れた涙のせいで、ロランの顔が良く見えなかった。

「ロランっ…!……ロラ…ン!っ…!」

今まで言い足りなかったものを埋め尽くすように、ひたすらに名を呼んだ。
握り返した手が震えて震えて、どうしようもなくて。握った掌に、祈るように額を押し付けた。

泣くことしか出来ない俺に、ロランは少し辛そうな顔をして。それでも、

「なぁサトリ…、あの時、の…返、事を、聞きたいん…だ、けど…。だめ、かな…?」

苦しそうに息をつきながらも、そう言って、いつものように笑った。

今、言わなきゃいけないのに。
今言わないと。もう。

「…ロラン!ロラ…っ…つっ。俺、っは…、俺は……!」

なのに、恐くて、恐くて、苦しくて、声が上手く出てこない。
残された時間はもうないのに、それでもロランはゆっくりと頷いて、俺の言葉を待っていた。

「俺…も」
「…うん」
「俺もっ…」
「…うん」
「…俺、も…」
「…うん」


「愛して…るよ」

「うん。」


最後に一度しっかりと頷いたロランの閉じた瞳から、一筋涙が零れた。

サトリ。ありがとう。

その最後の言葉が、空気を震わすことはなかったけれど。
俺は、初めてその唇に触れた。
指の先で、乾いた血を拭い。
何度も強請られた口付けを、その時初めて交わした。

どうして、今まで応えてやらなかったのだろう。
何度だってしてやれば良かった。
何度だって言ってやれば良かった。


「僕は、サトリを愛してるよ」


あの時言われた言葉に何度だって応えてやりたい。

だから、この花咲き乱れる庭園で。
俺達の記憶の始まりのこの場所で。俺は何度だってお前に届けたい。伝えたい。

この想いを。



「愛してるよ」




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シドー戦でサマを庇ったか何かでロレ瀕死→死亡
色々後悔しまくりなサマが、サマルトリア城の思い出の場所で生涯ずっとロレを想って過ごす妄想

果てしなく暗いポエムですみません(笑)





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