未成年の主張






「僕は、サトリが、好きだーーーーーっ!!!!」

ロンダルキア。
黒雲が去り、晴れ渡った真っ青な空にロランの声が響き渡った。
旅の終りとなったこの地を、陽光に眩しいばかりに輝きだしたこの地を。胸に、目に、焼き付けておこうと、雪原を一望出来る高台へ登って暫くしてのことだった。
三人三様の思いを抱き、言葉も無く、ただその壮大な大地を眺め見る。
正に、そんな時だったのだ。
隣に立つロランが深呼吸でもするのかと、すぅっと息を吸い込み、そして、叫んだのは。
抜けるように響いたと思ったその声は、直ぐに厚い雪へと吸い込まれ、しんと静まり返った。
思考が止まると言うのは正にこういう時なのかもしれない。
サトリは声もなく固まると、次第に煩く騒ぎ出した心臓に、冷や汗にも似た何かが背を伝うのを感じた。

何だ、今の?空耳?それとも幻聴か?

怖々と、軋んだ音でも聞こえてきそうなほどゆっくりと振り返ると、サトリは再び声を喉に詰まらせた。
見出だした先に、ロランの笑顔があったのだ。
やり遂げた、とでも言うべきか。
それは、満足仕切ったかのような清々しいまでの笑顔だった。

「……………っ」

サトリの頬に微かに朱がさしこむ。
さっきのあれが、空耳でも幻聴でもないことが知れて心臓が痛いくらいに騒ぎ出した。

「サトリ、君は?」

サトリ、君は。
動悸が煩いほどなのに、投げ掛けられたその言葉は、降り積もった雪よりもすっと胸に染み込んでくる。

「…え、あ」

未だかつてない動揺。
助けを求めルーナを見遣れば、彼女はニコニコと微笑むばかりで。
だが、他にどうすることも出来ず再び彼女へと目で訴えかければ、更に深く頷かれてしまった。

一体、どうしろと言うのだろう。
どうすれば良いのだろう。
その問の答えは分かっているのに、サトリは躊躇った。
ロランは何故言えたのだろうか?
どうして俺は言えないのだろうか?
言っても良いのだろうか。言ってしまっても良いのだろうか。
口にしてはいけない言葉だったのではないのだろうか。

旅の間、ずっと鳴り響いていたその問い掛けが、今まで以上に自分を縛り付けているのを感じた。

「サトリ」

名を呼ばれ促される。

「…………」

顔を上げられずにいると、ロランの声が淡々と続いた。

「サトリ、僕たちには権利があるよ?」

何の権利だよ。と言おうと思ってやめた。
何の、ではなく、どんな権利もが自分達にはあるのだと分かっていたからだ。
自分達はそれだけのことをした。
それだけの犠牲を払ったのだ。

「そうよ。誰にも何も言わせないんだから」

可愛いらしく片目をつむって見せるルーナに力付けられる。

サマルトリアに生まれ。良き王子であろうと生きてきた。
良き息子であり、良き兄であり、良き友であろうと努めてきた。
そして、それだけだと思って生きて、死んでいくのだと思っていた。

「サトリ、誰にも文句は言わせないから」

一体どれだけの非難と中傷を浴びせられるのか。
そんな想像は難くない。
ロランだってそうだろう。
全ての可能性を考えた上での言葉だったに違いない。
それが分かってしまう笑顔だったのだから。
なら。だとしたら、俺がここで逃げるのは、卑怯だ。
そう思った。

サマルトリアに生まれ。
ローレシアの王子に出会った。
彼の良き理解者でありたいと思った。
良き友でありたいと願った。
そして、良き友になることはできた。
でも、それだけでは満足できなくなった。
物足りない、嫌だと思ってしまった。
彼の傍にいるのは自分でなければ嫌だなんて、馬鹿げた想いが生まれた。
気付いた時には手遅れだった。
でも、それでも、自分はサマルトリアの王子だった。
それだけのことが、それ以上にないことだった。
良き王子であろうとしてきた今までの自分を否定してしまう事実だった。
彼だってそれは同じだろうに。
それでも、叫んだ言葉が真実だとしたら、ここで自分が逃げることは、彼の全てを否定してしまうことなのかもしれない。

そう気付いたら、思わず駆け出していた。
雪の降り積もった高台。
崖のようになった先の先まで走って足を止める。
両の手を口にそえて、すっと息を吸い込んで。
そして、眺めた。
この大地に足を踏み入れた時、空を覆っていた暗雲なんて一つもありはしなかった。
凜とした空気に空と大地が輝いていた。

「俺も、ロランが、好きだーーーーーっ!!!!」

吸い込んだ空気が音となり、そして最後の一音がすっと雪原に消えると、サトリはくるりと後ろを振り返る。
どうだ、参ったか。
そんな台詞が飛び出してきそうなほど不遜な顔は、いつものサトリだった。
だが、直ぐに慌てふためいた表情へと変わる。
駆け出してきたロランとルーナに同時に抱き着かれ、バランスを崩して三人で雪の中へ倒れ込んだ。


これから忙しくなるわね、とくすくす笑うムーンブルクの王女。
そして、感極まってサトリサトリと呼び続けるローレシアの王子が一人。

「お前ら、重いんだよっ、どけ!」

二人にのしかかられ喚く彼もまた。
三人が三人とも、泣き出しそうなほどに笑っていた。


「まずはローレシアへ凱旋ね!」
「ああ、帰ろうローレシアへ。サトリも、来てくれるよね?」
「ああ。…お前となら、どこへだって!」



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ってゆー未成年の主張deドラマCDへのオマージュ?
最後の台詞はドラマCDのラストで三人の名前を入れ替えてみましたよー(爆)みたいな。
私は勝手に、あのドラマCDを、「サマ→ムンはポーズで実はサマ→ロレ」だと思っているのですが(おい)
サマに都合良くルプガナ娘を宛がう公式設定はあまりに頂けないので、
悔し紛れに名前を入れ替えてやったぞ!ってなもんですよ(笑)

百ある未来の一つにロサマという可能性があったって良いじゃない!
ルーナも二人を応援してくれていて。一番の理解者で、最後まで協力してくれて。
これから色々あるけど、最終的には幸せ勝ち取っちゃう二人がいても良いじゃない!
後継者?ローレシアには腹違いの弟が沢山いるからね、問題ないよ、彼らの子を養子に貰おう。だって良いじゃない!
なんだかんだでローレシアとサマルトリアの最盛期を築き上げちゃって、後世の歴史書に「歴史上後にも先にもない双王の時代」とか記されたって良いじゃない!

サマが幸せだって良いじゃない〜〜〜〜っ。
うっうっ。なんか悔しくて泣けてきた(馬鹿かお前は)







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